パイロットが紹介する操縦のノウハウ ~タキシー編~

こんにちは!

パイロットが伝える操縦ノウハウシリーズ。
今回は「タキシング(地上走行)」について、パイロットならではの視点で操縦のノウハウをご紹介します。離陸や着陸に注目が集まりがちですが、実は地上の操作こそ、パイロットの力量が現れる大切なフェーズなんです。

TEXT BY K.K

自動操縦ができないタキシング

離着陸は基本的に地上から離れたあとはオートパイロット(自動操縦)によるアシストも可能ですが、タキシングの場合は言ってしまえばすべて「手動」での操作になります。

操縦桿じゃ曲がれない!?ステアリングチラーとは?

地上で航空機を左右に方向転換させる際、多くの方は「操縦桿(コントロール・ヨーク)を使うのかな?」と思われるかもしれません。しかし、実際には 「ステアリングチラー」 と呼ばれる操縦桿とは別のハンドルを使用します。これはコックピットの側面や操縦桿の脇に設けられている「取っ手」のような装置です。
車でいうハンドルに相当しますが、操作感はかなり異なります。車のようにハンドルを何回も回して曲がるのではなく、ステアリングチラーは一回転することは基本的になく。半回転の中でタイヤの角度をコントロールしていきます。機種によって感覚も異なるため、繊細なコントロールが求められます。

タキシングは“パイロットの実力が出る”

タキシング操作は見た目以上に奥が深く、スムーズな地上移動ができるかどうかで、パイロットの技量が如実に現れます。

ステアリング用のハンドルは、 「クルっ」と回らないよう、意図的に抵抗が掛けられており、ハンドルを操作する際に重さを感じられます。この抵抗がないと、クルっとハンドルが回ってしまい急ハンドルに繋がります。車でも急ハンドルとなると座っている人に大きなG(重力加速度)がかかりますが、大きい飛行機になると、急ハンドルは事故に繋がるほどの大きなGが発生します。そのため、仕組みで急ハンドルにならないよう工夫がされているのですが、この抵抗があるので、急な方向転換ができません。なので、常に周りの航空機や車両の動きに注意を払い、それぞれの動きを予測しながら誘導路を進んでいきます。

また、特に操作に注意を払うのが「カーブ」で、ハンドルを細かく操作すると「カクカク」とした曲がり方になり、このカクカクする分、登場しているお客様達に不快なGを与えてしまいます。ですので、カーブや曲がる時や旋回する際は、一発の操作で曲がれるよう頭の中で事前に進む道をイメージしています。

難しいのはブレーキ!仕組みと注意点

タキシー中の減速や停止には、ブレーキ(ラダーペダルの上部を踏むことで作動するブレーキ)を使用します。
航空機のブレーキは油圧(機種によっては電気)で作動するため、踏み込みすぎると急停止してしまい、乗員・乗客に不快な衝撃を与えてしまいます。逆に弱すぎると止まれないので、ここでも繊細な調整が必要です。
また、スラスト(エンジンの出力)とブレーキのバランスも重要。必要以上にエンジン出力を上げてしまうと、無駄にブレーキを踏むことになり、乗り心地も悪くなります。


【タキシー時に気をつけるべきこと】
●スピードコントロール:通常10~20ノット程度を維持。(空港によって速度制限などもあり)他の航空機の近くを通過するときは特に慎重に。

●他機や地上車両との位置関係:常に前後左右の安全確認を怠らないこと。特に停止線より手前で停止している航空機には要注意!無理に横切らない。

●天候の変化:雨や雪で滑りやすくなると、制動距離も変わります。路面のコンディションを把握することも重要な安全要素です。

タキシーラインに正確に乗せるコツ

誘導路には黄色い「タキシーライン(センターライン)」が引かれています。これは走行する場所の目標線で、このラインに機体のノーズギア(前輪)を正確に乗せることがパイロットの地上走行における腕の見せ所です。
コツとしては、

パイロットの右足(機長席の場合)がセンターラインの真上に来るよう意識する

ウィンドシールドに見える特定の目印とラインを重ねておく など、各パイロットが自分なりの“基準”を持っています。

ラインにしっかり乗せて走行することは、とても小さなことに見えますが、安全性にも直結します。

個人的にはタキシングが一番大変

いかがでしたか?
タキシーは「ただ地上を走っているだけ」と思われがちですが、その裏にはパイロットの技術と集中力が詰まっています。
次回、飛行機に乗る機会があれば、滑走路へ向かうその“地上のひととき”にも、ぜひ注目してみてくださいね。

こんにちは!

パイロットが伝える操縦ノウハウシリーズ。
今回は「タキシング(地上走行)」について、パイロットならではの視点で操縦のノウハウをご紹介します。離陸や着陸に注目が集まりがちですが、実は地上の操作こそ、パイロットの力量が現れる大切なフェーズなんです。

TEXT BY K.K

自動操縦ができないタキシング

離着陸は基本的に地上から離れたあとはオートパイロット(自動操縦)によるアシストも可能ですが、タキシングの場合は言ってしまえばすべて「手動」での操作になります。

操縦桿じゃ曲がれない!?ステアリングチラーとは?

地上で航空機を左右に方向転換させる際、多くの方は「操縦桿(コントロール・ヨーク)を使うのかな?」と思われるかもしれません。しかし、実際には 「ステアリングチラー」 と呼ばれる操縦桿とは別のハンドルを使用します。これはコックピットの側面や操縦桿の脇に設けられている「取っ手」のような装置です。
車でいうハンドルに相当しますが、操作感はかなり異なります。車のようにハンドルを何回も回して曲がるのではなく、ステアリングチラーは一回転することは基本的になく。半回転の中でタイヤの角度をコントロールしていきます。機種によって感覚も異なるため、繊細なコントロールが求められます。

タキシングは“パイロットの実力が出る”

タキシング操作は見た目以上に奥が深く、スムーズな地上移動ができるかどうかで、パイロットの技量が如実に現れます。

ステアリング用のハンドルは、 「クルっ」と回らないよう、意図的に抵抗が掛けられており、ハンドルを操作する際に重さを感じられます。この抵抗がないと、クルっとハンドルが回ってしまい急ハンドルに繋がります。車でも急ハンドルとなると座っている人に大きなG(重力加速度)がかかりますが、大きい飛行機になると、急ハンドルは事故に繋がるほどの大きなGが発生します。そのため、仕組みで急ハンドルにならないよう工夫がされているのですが、この抵抗があるので、急な方向転換ができません。なので、常に周りの航空機や車両の動きに注意を払い、それぞれの動きを予測しながら誘導路を進んでいきます。

また、特に操作に注意を払うのが「カーブ」で、ハンドルを細かく操作すると「カクカク」とした曲がり方になり、このカクカクする分、登場しているお客様達に不快なGを与えてしまいます。ですので、カーブや曲がる時や旋回する際は、一発の操作で曲がれるよう頭の中で事前に進む道をイメージしています。

難しいのはブレーキ!仕組みと注意点

タキシー中の減速や停止には、ブレーキ(ラダーペダルの上部を踏むことで作動するブレーキ)を使用します。
航空機のブレーキは油圧で作動するため、踏み込みすぎると急停止してしまい、乗員・乗客に不快な衝撃を与えてしまいます。逆に弱すぎると止まれないので、ここでも繊細な調整が必要です。
また、スラスト(エンジンの出力)とブレーキのバランスも重要。必要以上にエンジン出力を上げてしまうと、無駄にブレーキを踏むことになり、乗り心地も悪くなります。


【タキシー時に気をつけるべきこと】
●スピードコントロール:通常10~20ノット程度を維持。(空港によって速度制限などもあり)他の航空機の近くを通過するときは特に慎重に。

●他機や地上車両との位置関係:常に前後左右の安全確認を怠らないこと。特に停止線より手前で停止している航空機には要注意!無理に横切らない。

●天候の変化:雨や雪で滑りやすくなると、制動距離も変わります。路面のコンディションを把握することも重要な安全要素です。

タキシーラインに正確に乗せるコツ

誘導路には黄色い「タキシーライン(センターライン)」が引かれています。これは走行する場所の目標線で、このラインに機体のノーズギア(前輪)を正確に乗せることがパイロットの地上走行における腕の見せ所です。
コツとしては、

パイロットの右足(機長席の場合)がセンターラインの真上に来るよう意識する

ウィンドシールドに見える特定の目印とラインを重ねておく など、各パイロットが自分なりの“基準”を持っています。

ラインにしっかり乗せて走行することは、とても小さなことに見えますが、安全性にも直結します。

個人的にはタキシングが一番大変

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